資産運用気づきのタネ133回 「難しい投資とやさしい投資」

2015年3月26日 08:24

難しい投資とやさしい投資


投資リターンの源泉は企業が生み出す付加価値です。企業が世の中のためになる事業を営むことで利益が生まれます。その利益の一部は配当金として支払われ、残りが内部留保として株主資本に加えられます。当然のことながら企業の付加価値の創造と株主資本の成長は長い年月をかけて実現します。

株式市場では様々な投資家が価格形成に関わっています。人生を通じて何十年という時間軸で投資をする人もいます。数年単位の人もいるでしょうし、さらに、一か月、一週間という短期でトレードをする投資家だって存在します。最近は超高速の取引をする機関投資家もいます。

株主になるということは企業のオーナーになることです。長期投資家は企業を長い間保有して、その企業が成長するとともに自分の資産を増やしていきます。しかし、保有期間が短いほど、価値の増殖という裏付けのないと投資となってしまいます。つまり、短期投資であるほど自分が儲けるためには他の人を犠牲にしなければならないのです。つまり、ゼロサム・ゲームです。

プロの世界は厳しいものです。「できるだけたくさん、できるだけ早く儲ける」競争をいつも強いられているのです。そのために、投資の手法はどんどん複雑になって行きます。また、投資対象も株式や債券といった企業活動に基づいてリターンが生まれる証券から、価格の動きに基づいて評価される派生証券へと広がっていきます。それが益々、複雑度を増していきます。

長期投資家はそのような難しい知識も必要ないし、複雑な取引も不要です。十分に分散された株式と債券を、適切な配分比率でじっと保有していればいいのです。時には短期間で大儲けしたなどという話を聞くこともあるでしょう。そのような人は単に運が良かっただけです。そこそこのリターンを長い期間積み重ねていけば最終的には大きな資産を手にすることができるのです。

大切なことは株価が影であると割り切ることです。影を追いかけても仕方がありません。十分に分散されたポートフォリオの株主価値の増大にのみ注目して長期に保有すること、そうすれば株価も株主価値のトレンドに収斂していくのです。投資はできるだけたくさん、できるだけ早く儲けようとすると難しいものです。そこそこの利益で満足して時間をかけて資産成長をはかる投資はとてもやさしいものなのです。

(この原稿は投資手帖 2015年4月号に寄稿したものを加筆修正したものです)

2015年3月26日 08:24 岡本和久 |

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