資産運用こぼれ話:ESG情報がもたらす効果

2018年2月22日 19:52

ESGという言葉が投資の世界で広まりつつあります。EEnvironment (環境)、SSocial(社会)、GGovernance(統治)の頭文字です。気候変動、奴隷的強制労働、格差拡大、過大すぎる役員報酬など、社会が抱える問題一般を示します。

ESG投資というのは主として機関投資家がこれらの問題を配慮して銘柄選択をしようということです。さらに問題のある企業に株主として働きかけることで世の中の諸問題の解決に資することを目的としています。こうして企業は世の中を良くしていくことを強く求められていることになります。

 これは個別銘柄を選択して投資をするアクティブ運用だけでなく、インデクス運用などにも当てはまります。ESGに関連する問題を解決していくことで世の中全体の質を向上し、成長性を高めることでトータルのリターンを向上していこうというのです。事実、インデックス・ファンドの雄、米国バンガード社でも専従アナリストをすでに20名程度採用しているという話を創業者のボーグルさんの講演で伺いました。

 さらにこれはサプライチェーンにまで及びます。サプライチェーンの企業がこれらの問題にどう取り組んでいるかというところまでが責任の対象なのです。食品会社が海外のサプライチェーンで不適正な原材料を使用していたとすると、「当社は被害者だ」とは言っていられないのです。そのような企業を使っている責任が問われるのです。

 

重要なことは、これらの問題に関係のある企業がどのようなかかわり合いを持ち、どのような対策を講じているかなどのディスクロージャー基準も制定する試みが続いており、これにより財務情報だけでなくESG情報も統一された基準が定まっていくことでしょう。日本でもGPIFを始め、前向きの努力が続けられているのは良いことです。

私はESGの持つ本当のインパクトは機関投資家の投資行動にとどまらないだろうと思っています。つまり、社会の抱える問題に企業がどのようなかかわりを持っているかが生活者全体に大きな影響を与えるだろうと思うのです。

 生活者は消費者、従業員、そして、資本の出し手として三つの側面で企業とかかわっています。ESG情報がわかりやすくディスクローズされるようになれば、消費者は消費行動にそれを反映させるでしょう。製品やサービスが提供されるまでにどのような問題が発生しているかも「見える化」されるのです。

従業員も同じです。これらの情報が従業員の目に触れるようになれば、会社の方針がより良い方向に向かうように声をあげる人が増えることでしょう。また、就職先の判断も影響されるだろうと思います。ESG情報は機関投資家が投資のリターンを高めるためだけの投資戦略ではありません。生活者一人ひとりが自分の望む社会を、企業を通じて創るための鍵になる情報としての価値があるのです。

(この文章は投資手帖 2018年03月号に寄稿したものを加筆修正したものです)

 

2018年2月22日 19:52 岡本和久 |

« 前の記事 | 次の記事 »

岡本和久のI-OWA日記

サイトマップ 岡本和久のI-OWA日記TOP ページトップへ